東京高等裁判所 昭和29年(ラ)63号 決定
民事訴訟法第七百五十六条によつて仮処分に準用される同法第七百四十九条第二項に定めた十四日の期間は、保全処分の特質たる暫定性迅速性の故に、これが執行につき特に法定された期間であり、その期間を経過するときは事由の如何を問わず仮処分命令に基く執行は最早為し得ないこととなるのであつて、仮処分債権者が所定の期間内に執行吏に委任して執行に着手せんとしたところ、その責に帰すべからざる障碍により執行が不能に帰したような場合でも、苟も右期間内に事実上執行に着手することなくして期間を経過した以上、仮処分命令はその執行力を失うに至るものといわざるを得ない。本件において仮処分の執行委任は法定期間内に為されたものの、その目的物件は当時米軍の接収にかかり米国軍人がこれを占有していた為め執行不能となり、右接収解除後本件執行処分が為されたことは記録上明かであるが、その時は既に法定期間を経過していたのであるから、該執行は違法たること論なく、原審のこの点に関する判断はもとより正当である。
本件仮処分の目的物は本件建物以外にも存し、本件建物は数多の物件と共にその対象を為していることは所論のとおりである。しかし本件物件は他の物件と不可分の一体を為すものでなくて、別個独立の建物たること明かであるから、他の物件に対する執行が法定期間内に為されたからとて、法定期間経過後に至り右執行手続の継続として全然別異の物件たる本件建物に対し更に仮処分の執行を為しうべきものでなく、かように仮処分命令が執行期間の経過によりその内容の一部につき執行力を失う結果を生ずることのあるのは当然であつて、何等異とするに足りない。